“戦争”が終わった。
14名の死者と、数多くの重傷者を残して。
一つ、息を大きく吐いて、ゆっくりと壁に背を預ける。
度重なる戦闘で消耗はしていたが、致命的な怪我は無い。
身体は重いものの、歩く力はまだ残されていた。
――俺は、今も生きて、立っている。
いつもと変わらぬ朝。
いつもと変わらぬ日常。
“世界結界”に守られている、全ての人々にとって。
それは、真実でなければならない。
既に、辺りは薄暗くなりかけていた。
翳が去ってから、俺の心は大きく乱れ、揺らいでいる。
何故、ああまでして、彼女を引き止めようとしたのか。
何故、彼女に向けてあのような言葉を口にしたのか。
その理由は、俺にはわからなかった。
帰り道、近所の公園で泣いている子供を見かけた。
転んで膝を擦り剥いたのだろうが、近くに親らしき人の姿はない。
俺は子供嫌いではないが、なにせ子供の方から避けられる性質だ。
だから、普段は殊更に怖がらせないよう、あえて接触しないようにしている。
ただ、怪我をしているなら放っておくわけにもいかないだろう。
そう考えた俺は、その子供へと歩み寄っていった。
彼岸ということで、両親の墓参りに行った。
本来なら、中日に祖父と共に向かう予定だったのが、野暮用でこの日に回さざるを得なかったのだ。
土曜の午後とはいえ、彼岸の最終日ともなると人の姿はまばらで、我が家の墓の周囲には俺を除いて誰もいない。
今にも降り出しそうな曇天の下、俺は久々に両親との時を過ごしていた。