“辰巳 宣昭”は、俺が小学校に通っていた頃の級友だ。
物怖じというものをまったく知らない奴で、何度か俺の家まで押しかけてきたりもした。
特徴的な気の抜けた笑い顔は、昔と寸分変わらない。
聞けば、宣昭も最近になって“能力者”としての覚醒を果たしたらしい。
こいつに戦いが務まるのかと心配になったが……まあ、ひとまずそれは置いておこう。
ともかく、また同じクラスになったわけだ。
再び付きまとわれるかと思うと少々鬱陶しいが、まあ、知った顔がいるのは悪くはない。
放課後になると、宣昭は俺を強引に連れ出した。
紹介したい相手がいると聞いたが……どうやらこの学園にも、あいつの犠牲者は存在するらしい。
そうやって引き合わされたのが、“紅乃 空”。
キャンパスは違うが、同じ高校2年生の女子だ。
事前に宣昭から出会いの経緯は聞いたものの、どう考えても強引に友人になったとしか思えない。
「――何で懐かれたのか、ほんとに理解不能だし」
それは、俺にとっても長年の疑問だ。
まあ、紅乃には運が悪かったと思って諦めてもらうしか道がなさそうだが。
そのうち、上手く受け流す術も覚えられるだろう。
その後、俺は宣昭の勧めでとある“結社”に向かうこととなった。
“能力者”の“結社”と聞いて、どんな大仰なものかと思ったが……どうやら、この“結社”は、仲間内で騒ぐことを主な目的にしているらしい。
先ほど出会った紅乃も、この“暇潰し”結社の一員だと聞いている。
学年も性別も色々な奴らが、思い思いに騒ぐ“結社”。
こういう雰囲気の中に身を置いてみるのも、いいのかもしれない。
――その日のうちに、俺は結社への入団届けを出した。