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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2024/11/25 (Mon)

〔承前〕

「――ああ、夕飯が終わって少ししたらそちらに連れて行くよ。
 君には世話をかけるが、よろしく頼む……」

携帯電話を切り、水分や熱の届かない台所の片隅にそれを置く。
夕飯の支度にかかる前に、電話で彩虹へ事情を説明し、今晩は蓬琳を彼女のマンションに泊めてもらえるよう頼んだのだ。

彩虹も、現在は一人暮らしの身である。
蓬琳とも姉妹のように仲が良く、電話で話を切り出したところ、快く申し出に応じてくれた。


――今日は、ホウリンさんのパジャマを買って帰りますわ。


楽しそうに口調を弾ませる、彩虹の声。
それは、包丁を握る俺の耳に、余韻としてしばらく残っていた。

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普段、我が家では俺が台所に立つことが殆どだ。
古くより『男子厨房に入らず』という言葉もあるが、何せ男子しか居ないのだから、四の五の言ってもいられない。

俺は別段料理が好きというわけではないが、かといって嫌いでもなく。
むしろ好き嫌いの次元を超え、それはごく日常の営みとして存在しているように思う。

長い間、私はずっと、独りで生きていけると信じていた。
他人の助けを欲しがるのは甘えだと、そう思っていた。


やがて、それが間違いだったと気付いた頃。

私はまた、独りに戻っていた。

キャラクターの名前と、その称号の由来などを。
設定についての解説なので、今回は背後にて失礼致します。

彼岸の中日。
墓地には薄い線香の煙が幾筋も漂い、秋晴れの空へと溶けていく。

昼を過ぎて、彩虹と二人でここを訪れた俺は、まず彼女の婚約者であった“彼”を参り、その後、俺の両親と祖母が眠る墓の前へと足を向けた。
墓石を磨き、花を供えながら。
俺は、ここでいつもそうするように、墓に刻まれた文字を眺める。
それは、そこに眠る者たちの名と、それぞれの没年月日だった。

まったく同じ年、同じ日付に並ぶ両親の名前。
それからおよそ一年が過ぎた日付に、祖母の名前。

両親は交通事故で亡くなったと聞かされていた。
俺が赤ん坊の頃に家族三人の乗る車が当て逃げに遭い、両親はともに即死、俺だけが、左頬に傷を負いながらも奇跡的に助かった。
息子夫婦を一度に亡くした祖母の衝撃は大きく、まもなく後を追うように病死したという――


食い入るように墓石を見つめていた俺に、彩虹が気遣わしげな視線を向けてくる。
何でもないと、誤魔化して微笑おうとしたが、それは上手くいかなかった。

当て逃げ事故の“犯人”が、とうとう見つからなかったのは何故か。
その日に限って、事故現場に一人の人間も対向車もなく、目撃証言すら得られなかったのは何故か。
素人ですらわかりそうな状況の不自然さに誰一人気付くことなく、忘れられるように迷宮入りしたのは何故か。

――“世界結界”。

“非日常”の世界を、“日常”から覆い隠すための境界。
数々の疑念の答えは、その、たった一語に集約されていた。

「俺は――」

重い沈黙の後、彩虹の視線を避けるように、そっと目を伏せる。
心中のざわめきに突き動かされるまま、俺は初めて、その言葉を口にした。

「両親の事故はゴーストによるものだったと……そう、信じている」

寅靖の過去を描いたSSです。
長い・暗い・惨いと三拍子揃っておりますので、苦手な方はご注意下さい。
なお、一部アンオフィシャルな内容が含まれる可能性があります。

……気付けば、皆様から回していただいたバトンが手付かずのまま増えておりました。
順番通りにとは参りませんが、可能なものから回答させていただこうと思います。

あの、私の口調に、違和感を覚えられる方もいらっしゃるようですが……。
それには、ちょっとした理由がございます……。

“竜宮城”攻略戦――俺にとって、二度目の『戦争』。
この戦いで、学園は、以前の“土蜘蛛戦争”の倍にのぼる30名の死者を出した。

中に知人の名が含まれていなかった事を、手放しに喜ぶ気にはなれない。
友人・知人を辿っていけば、いずれは死者と関わりを持つ者に突き当たる。

去り逝く者、喪う者。
戦場において、この二者はどこまでも紙一重だ。
気を抜けば、たちまち自らがその仲間入りを果たすだろう。
いずれか一方か、あるいは両方か。

無事に戻って来た皆の顔を見られたことは、心から嬉しかった。
しかし、あれ以来。俺は時折、堪らなく恐ろしくなる。

“玉手箱”を手にした青年と、海底に眠る“竜宮城”。
御伽噺としか思えないこれらの単語が、この夏に頻発した海のゴースト事件の元凶だと、一体誰が信じるだろう。

“玉手箱”の名を持つそれは、古代の遺産たる“メガリス”。
その恐るべき力は、近海のゴーストを集め、やがて巨大な“竜宮城”を形成した。

このまま放っておけば、海はゴーストで埋め尽くされてしまうだろう。
一刻も早く“メガリス”を確保し、“竜宮城”を崩壊せしめなくてはならない。

数千人規模の能力者たちによる作戦。
『戦争』と呼ばれる戦いが、再び始まろうとしていた。

つい先日纏められた、依頼の報告書の束。
子供神輿の前で撮られた写真と、そこに並ぶ笑顔。

それら戦いの記録と、夏の思い出を眺めた後、視線を傍らの仏壇へと移す。
線香の煙が薄く昇る中、土産に持ち帰ったスイカが、皿に載せて仏前に供えてある様子が見えた。


甘く熟れたスイカが、見渡す限り一面に実る畑。
街の喧騒から離れ、ひたすら穏やかな時間が流れていく農村。
――そこが、今回の依頼の舞台だった。


リプレイ『スイカ泥棒、故郷に帰る』(八雲秋MS)

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