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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2017/10/21 (Sat)

“玉手箱”を手にした青年と、海底に眠る“竜宮城”。
御伽噺としか思えないこれらの単語が、この夏に頻発した海のゴースト事件の元凶だと、一体誰が信じるだろう。

“玉手箱”の名を持つそれは、古代の遺産たる“メガリス”。
その恐るべき力は、近海のゴーストを集め、やがて巨大な“竜宮城”を形成した。

このまま放っておけば、海はゴーストで埋め尽くされてしまうだろう。
一刻も早く“メガリス”を確保し、“竜宮城”を崩壊せしめなくてはならない。

数千人規模の能力者たちによる作戦。
『戦争』と呼ばれる戦いが、再び始まろうとしていた。

作戦決行を間近に控えたある日、俺はいつもの如く光の庭を訪れていた。
この状況で茶会が開かれるはずもないが、慌しい雰囲気の中、気を落ち着かせる場所と時間は必要だ。

戦いにおいては、自らと、共に肩を並べる者たちの命を懸けることになる。
ほんの少しの油断が永遠の別れに直結する、それが戦場というものだ。
何度経験しても、こういった緊張には慣れるものではない。

樹に背を預け、ゆっくりと深呼吸を行う。
視界の隅に、ふと、小柄な人影が、懸命に長槍を振るっている姿が見えた。
ホウリン・ギョク――正しくは“玉蓬琳”。
結社の一員であり、彩虹を“姐姐(姉さん)”と呼んで慕う娘だ。

軽く声をかけると、彼女は真っ直ぐな瞳を向け、控えめに口を開いた。

「兵……は、血路開く……将を守る……
 ワタシ……は、兵 戦う……しか知らない……から。
 出来る事、する……デス」

多少の怪我は慣れている。だから平気だ。
そう、たどたどしい日本語で語る様子に、心の隅がざわめくのを感じる。

「戦場に赴く以上、怪我をするなとは言わない、が……」
 
自分に出来ることをする、そのために戦うのなら。
――間違っても、命を粗末にするような真似だけはするな。

思わずそう口にした俺に、理解できないといった風情で首を傾げ。
自分程度の戦力は失っても戦況に響かないと、事も無げに言う。

「無駄死に……は、しない…… 必要……で、役目が下れば……」
「言うな。それ以上は――」

嫌な予感は、ここに来て確信に変わりつつあった。
遮る間もなく、決定的な一言が、彼女の唇から紡がれる。


「――ワタシは 死ねる」


一片の躊躇いも感じさせない、明瞭に澄んだ声だった。

「寅靖、や……姐姐や導人の為なら…… 無駄違う 死ねる」


自分は無能者だ。
だから、せめて、戦の駒として役目を全うする。

――馬鹿を言うなと、叫びたかった。
駒であれば、失って悲しむ者など居ないはずだ。

今、目の前に居る、この小さな娘が戦場に命を散らせたとしたら。
光の庭を憩いの場とする者たちの中、平気な顔をしていられる者が果たして何人居るだろうか。
少なくとも、“妹”を喪った彩虹の嘆きは、想像に余りある。

「……寅靖、も 悲しいの……か?」
「当たり前だろう……!」

答えながら、怒りに似た感情が湧き上がる。
一度関わった人間の死に際しても、何も感じずにいられるほど。
そこまで自分が薄情であるとは、思いたくなかった。

少なくとも、俺は忘れない。
たとえ、自分の目の前から永遠に姿を消してしまったとしても。
最初から居なかった者として、扱うことなど。
きっと、出来はしない。

「寅靖……謝々」

長い沈黙の後、ぽつりと呟くような声。

「……対于我、没有存在价値……  
 でも、違う……なら……
 生存……の、令……只要能就努力」

彼女の母国語が入り混じった台詞からは、正確な意図を汲み取ることは難しい。
それでも俺は、ただ黙って、それを聞いた。

「――蓬琳」

身を屈め、向かい合う小さな肩に両の手を置き、視線の高さを合わせて。
俺は初めて、彼女の姓ではなく、個人としての名を呼んだ。

お前は、決して一つの駒などではなく、一人の人間であるのだと。
念を押し、言い聞かせるように。

「生きて、ここに戻って来い。……必ず」

戦場に“必ず”、“絶対”などという単語は存在しない。
気休めにすらならないと、頭で理解してはいても。
この時の俺は、そう、約束を取りつけずにはいられなかった。

「対于我、没有存在价値……」

微かな頷きの後、それを裏切るように再び発せられた呟き。
余韻は、大樹の葉が風に揺れる音に紛れ、やがて消えていった。

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