忍者ブログ
(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/05/08 (Wed)

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【Fly to the moon ―最期の願い】

俺の傍に在ることを、お前が望むのなら。
俺の向かうその場所に、必ずお前を連れて行く。

お前が、孤独を厭うのなら。
俺はお前の傍に在って、手を繋いでいよう。
俺が見るのと同じ景色を、お前にも見せよう。
いつか、この命が尽きる日まで。


――それは、遠い日に交わした誓い。



初めて出会った時、兎耳の少女はひどく寂しそうで。
放っておいたら、寂しさのあまり消えてしまう気がした。

――おいで。

差し伸べた手を、少女の手が遠慮がちに取る。
心細さに震える小さな手を、そっと、包むように握った。

――大丈夫だよ。俺で良ければ、ずっと傍に居るから。

あれは、とても月の綺麗な夜で。
俺はその少女に“ユエ”と名付けた。


遠い、遠い日のお話――。

PR

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【The Vanishing ―全てを無に】

蔓の尖端が、スーツを容易く突き破って肉に食い込む。
電光剣で大半を切り払ったが、それでも3本ほど避けきれなかった。
背後にユエの動く気配を察して、振り向かずに叫ぶ。

「――来るなッ!!」

蔓を打ち込まれた場所から、痺れるような感覚があった。
動きが鈍ったところに別の蔓が巻きつき、全身を締め上げる。

「そこから動くんじゃない! 早く時を巻き戻せっ!」

俺の背後で、ユエの詠唱時計が唸り、時を刻む。
直後、蔓はびくりと震えて元の位置へと戻っていった。

“攻撃を受ける前の瞬間”へと、ユエが時を導いたのだ。
限定的に時間を巻き戻す――これが“クロックラビット・ノワール”の能力だった。

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【Who killed her? ―誰が彼女を殺したか?】

いつか、星海の畔に辿り着けたとしたら。
過去のどの瞬間に赴き、何をどのように改変するかは、大分前から決めていた。
俺と彼女の足跡を辿り、彼女の死に関わった要素をくまなく調べ。
悩みに悩み抜いて、自分のなすべき事を決めた。

自分勝手な選択だと、我ながら思う。
こんな事で、果たして彼女は幸せな生を取り戻せるのか。
俺が殺めた数多の命と、見捨てた我が子に対して、本当に責任を果たせるのか。
そして、ユエは――。

一番肝心なそのことを、俺はユエに言えなかった。
全てを知れば、この相棒は決して俺を舟に乗せなかっただろうから。

俺が選んだのは、ユエにとっても残酷な道であるはずだから。

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【The Landing ―戻れない道】

舟が動き出すと、海に見えた水面は、むしろ河に近いように思えた。
星の輝きが生み出す流れの中を、銀の舟が音も無く進む。
ふと遠くを見れば、俺が知るどの国にも似ていない、しかし輝くばかりに美しい都市が、蜃気楼のように浮かんでは消えていった。

舟の舳先には、瑠璃色の硝子で作られたランプ。
銀にも白にも見える渡し守の面が、うっすらと透けるように青い。
その仮面の奥からは、人の気配というものが全く感じられなかった。

「……荒唐無稽の伝説では、無かったのだな」

思わず漏れた呟きは、銀の櫂を操る渡し守の耳にも届いたようだ。
其れは俺の存在が、か? ――と問い返す。

「……此の通り、現実と夢幻の間(あわい)を永劫揺蕩う者さ。森羅万象の楔と軛とが朽ち尽きぬ限り在り続けさせられる、只人の業の見届け役とも言う」

無機質な声が紡ぐ言葉は、俺の胸を微かに突いた。
自嘲が、唇を僅かに歪ませる。

「……そう、か。そう言われてしまうと些か耳が痛いな」

伏せかけた視線を戻し、俺は仮面の渡し守を真っ直ぐに見た。

「俺のように戻らぬ過去に固執し続ける者がいる限り、主殿は在らねばならぬのだろう?」

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【Twinkle Twinkle Starry River ―星海の畔】

最後の仕事は、一向にはかどらなかった。
ターゲットのガードが固すぎて、必要な情報が揃わないのだ。
特に、俺の能力を生かすには自らがターゲットに接近する必要がある。
行動範囲が掴めない事には、文字通り手も足も出ない。

さらに悪い事に、ターゲットも自らの危険を感じていたようで、腕利きのボディーガードを雇ったらしいという情報まである。
ボディーガードが能力者である可能性も充分に考えられ、そうなると仕事はますます簡単にはいかなくなるだろう。

幸い、依頼人も容易い仕事とは考えていないらしく、ある程度の時間のロスは考慮に入れてあるはずではあったが……。

どうしたものか、と書斎の椅子に背を預けて考え込む。
傍らで絨毯の上に座っていたユエが、俺を気遣わしげに眺めていた。

「こういう時は、気分転換をするに限るな」

軽い口調で声をかけると、ユエは一つ頷いてにこりと笑った。

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【Down the Despair ―闇に堕ちる】

光に満ちた幸福のすぐ裏側には、絶望の暗闇が息を潜めている。
隙あらば運命を真逆に裏返し、人を地獄へと誘うためだ。

それは遠い昔、大きすぎる犠牲と引き換えに得た教訓だった。
結婚の約束を交わした恋人と、彼女に宿った俺達の子と。
俺は、一瞬にして全てを喪ったのだ。

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細は
こちら

〔承前〕

【The Wertiger's Dream ―求める男】

「……これも空振り、か」
プリントアウトした資料をデスクに放り出し、椅子に身を沈めて天を仰ぐ。
仕事を終えて自分のマンションに帰宅してから、ずっと書斎に篭って目的の情報を探していたのだが、殆ど成果は上げられなかった。

失望の溜め息を漏らし、疲れた目を閉じて思案にふける。
やはり、国内では限界があるだろうか。

仕事から足を洗って探索に専念できれば、その方が確実には違いないのだが――世界中に行動範囲を拡げるとなると、まだ資金面で若干の不安が残る。
あと、仕事を何回かこなせば、それも解決できるだろうか。

頭の中で計算を始めた時、電話が鳴った。
 

エイプリルフールの仮想設定における連作SSです。
 詳細はこちら


【Prelude ―序章】

遠い闇の向こうから響く、目覚まし時計のベル。

それは、夢の終わりの合図――。


目が覚めてみると、いつも通りの起床時間だった。
寝起きの良い俺にしては珍しく、随分と長くまどろんでいた感覚がある。
その間ずっと、目覚まし時計の今どき古風なベルを聞いていた気がするのだが……実際は、数分も経過していなかったらしい。

眠っている間に、夢を見ていたようだ。
長い、長い夢。

夢の大半が、そうであるように。
宵の夢もまた、目覚めた瞬間に記憶の扉を閉ざしてしまい、内容は殆ど覚えていない。

ただ、感情だけが微かに残っていた。
そこには幸福があり、絶望があり、希望があり。
喜びがあり、怒りがあり、悲しみがあった。

本当に、あれは一夜の夢に過ぎなかったのだろうか――。

数日前から、大掃除の一環として空き部屋の押入れの整理をしている。

元は俺の父母が使っていた部屋であるらしいが、主を失って二十年近くが過ぎたそこは、やけにがらんとしていて、生活感に乏しい。
当然、現在は使って居ない部屋であるし、もともと部屋数だけは無駄に多い家であるから、特に物の収納場所に困っているわけでもない。

祖父が何故、この押入れの整理を唐突に俺に命じたのか、その意図はわかりかねた。
その祖父は所要で家を空けており、何かと作業の邪魔をする桜は炬燵のある居間に閉じ込めてある。

この部屋に居るのは俺一人だった。
 

〔承前〕

この時。俺に、目的地を定めるような判断力は残されておらず。
ただ、ひたすらに、人の居ない場所を求めて走った。

辿り着いた先は、海。
夏であれば、海水浴で賑わうだろうこの場所も。
今は、冬の冷たい風が、潮の匂いを孕んで吹きつけるのみ。
独りで過ごすには、都合が良かった。

砂浜に腰を下ろして、鈍色の海を眺める。
上着もなく飛び出した身に寒さが沁みたが、それすらもどうでも良かった。
寄せては返す波を瞳に映し、思考は再び疑念に沈む。

――俺は、何のために生きているのだろう?

Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]