初めて『大樹のある光庭』からの出場となった、第6回バトルカーニバル。
俺たちは初戦を辛くも勝ち残り、そのまま2戦目の開始を迎えていた。
先の試合で前線を支えた深淵と、シャーマンズゴーストのチカは既に戦えず、俺と翳もダメージが大きい。
辛うじて無傷なのが白馬だけという状況で、実力の拮抗した4人チームを相手にするのは、どう考えても無理がある。
しかし、俺はこの勝負を捨てる気などさらさら無い。
後ろには、消耗した翳の姿。盾役を買って出たにも関わらず、1戦目ではフォローが間に合わなかった。
どこまで護りきれるか――それが、俺の戦いだった。
俺にとっての幸運は、分身術がまだ残されていたことと、試合場が細く伸びた形であったことだろう。
一番狭い道に陣取ってしまえば、相手は俺を倒さない限り先に進むことができない。
クレセントファング、水刃手裏剣の“奥義”を中心とした相手の構成は脅威だが、逆に言えば、そこまで多くの弾数は確保できないということでもある。
おそらく、多くてもそれぞれ12発が限界だろう。
あとは、一発でも多くそれを受けきることさえ考えていればいい。
そうやって、開き直ったのが功を奏したのだろうか。この試合、俺の身体はよく動いた。
何度か片膝をつきつつもクレセントファングを4発で打ち止めとし、あとは残る手裏剣に集中する。
10発を数えた後、11射目でとうとう限界が来た。
――あと一発。もう一度だけ、立ち上がれば。
そう思ったものの、ジャッジは既に俺の戦闘離脱を告げていた。
……つくづく、詰めが甘い。
試合終了後、白馬が人の悪い笑みを浮かべながら声をかけてきた。
「お前、今回ちょっと頑張りすぎじゃねぇの?」
「俺は常に己の全力を尽くしているが?」
「それは間違いないだろうがね……」
「……何が言いたい」
眉根を寄せる俺の肩を、白馬が満面の笑みで叩く。
「俺は王子、お前は騎士ってことだ」
からかうような口調に、ますます俺は不愉快になった。
白馬の視線が、少し離れて歩く翳をちらちらと追っているのも気に食わない。
「お前と違って、俺は騎士だの王子だのという柄ではない」
「……くくっ、お前は十分騎士向きだぜ……」
「その気色の悪い顔をやめろ」
「……俺に八つ当たりするな……くくっ」
「付き合ってられん」
そう言い捨てて横を向いた瞬間、とうとう白馬が噴き出した。
「……くくっ……あはは……っ、もう駄目だ、耐え切れねぇ……っ」
――いっそ、殴って黙らせてやろうか。
俺の不穏な考えをよそに、白馬の笑いは止まらない。
「お前ってホント一途で良い奴だわ……」
人をここまで笑い者にしておいて、今さらそんな言葉が信用できるか。
不機嫌極まりなく黙り込む俺の隣で、白馬はそれからしばらく笑い続けていた。
【戦績】『司牡丹』予選2回戦目で敗退(不戦勝1回)/バトルカーニバル:1勝