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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2017/10/18 (Wed)

再び訪れた戦い。――その、出発の朝。
俺は、やや複雑な胸中を抱えて、自宅の玄関で靴の紐を結んでいた。

すぐ後ろでは、飼い猫の“桜”が、丸く青い瞳を俺に向けている。
短く鳴き声をあげた頭を軽く撫でた後、俺は腰を上げて家を出た。

 俺の心配なら、今回はいらない。無事を祈るなら、むしろ――

わざわざ見送りにきた桜の姿を思い浮かべ、微かな迷いが胸をよぎる。
この戦いで、俺は前線に立つことを許されない身だった。

土蜘蛛たちが巣食う最後の砦、葛城山。
それに対する殲滅作戦の実行を支持するか、支持しないか。
先の戦争の記憶もまだ新しい中、学園の能力者たちの意見は大きく分かれた。

一度、『支持をしない』と意思を表明した者は、殲滅作戦において戦いの列に加わることはできない。
学内の意思統一ができていない現状、僅差で作戦の決行が決まってしまえば、それだけ少ない戦力で戦わねばならないのだ。

そのため、不支持に傾いていた層には、前線に赴くと決意を固めた友たちを支えんがために、作戦を支持する側に回る者も決して少なくはなかった。
先の戦争で【LS1】を支えた神凪もまた、その一人だ。


――果たして、俺の決断は正しかったのだろうか。


戦いが避けられるなら誰も傷つかずに済むのだと、そんな一縷の可能性に縋って。
――挙句、賭けには敗れて。
結局は、前線に赴く者たちに、ただ背を向けていただけではないだろうか?

神凪も。鴬生も。楓咲も。
それぞれの“護る”決意をもって、戦地へと向かった。

対する俺は、その後方で待ち、その無事を祈ることしかできない。
有事の際の支援と言えば聞こえは良いが……それはすなわち、前線が窮地に陥るまで、出番が無いということでもある。
それまで指をくわえているしかない己の立場が、何とも歯がゆい。

思わず奥歯を噛み締めたその時、背後から聞き慣れた声が響いた。

「おはよう、寅ちゃん」
「宣昭か……どうした、こんな朝早くに」

もう先の戦いの怪我も治った様子で、足を引きずる仕草は見られない。
曇りのない表情で、宣昭ははっきりと口を開いた。

「どうしたって、決まってるじゃない」
「――お前も、行くのか」

宣昭も、俺と同じく作戦の不支持を表明した一人だった。
前線には赴けず、自然バックアップのための要員として数えられる。
俺の言葉に、宣昭は神妙な顔で頷いた。

「うん。僕が行っても、何にもならないかもしれないし……
 本当は、みんなにも戦ってほしくないけど。
 怪我をする人が、少しでも減ればいいなって」

――今は、自分にできる全てを。

ここ数日、ずっと自分に言い聞かせてきたことを、もう一度思い出す。
そう。それが、己が選んだ道ならば。貫き、前に進むしかない。
肩を並べることは許されずとも、腕を伸ばして届く距離に立って。

自らの迷いを断ち切り、宣昭の顔を正面から眺めて問う。

「紅乃のそばにいてやらなくていいのか」

この戦場より、宣昭の支えこそを必要としている者があれば。
当然、そちらを優先して然るべきだ。
しかし、宣昭は小さく首を横に振り、答える。

「空ちゃんは、今はそっとしておいてあげたいんだ。
 怪我は、もうほとんど良くなったみたいだけど……」
「そうか」

ここもまた、同じ。
傍に寄りそうだけが、絆ではない。そういうことなのだろう。

「――行くぞ、宣昭」
「うん」


向かう先は、新たなる戦場。
槍としてではなく、また、楯としてでもなく。

――俺たちは、それでも、戦える。


【♪POLAND/ZABADAK】

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