まず、土蜘蛛の屋敷からみんなが無事に帰ってくることができて良かった。
空ちゃんとは、別々の班だったからちょっと心配だったけど、やっぱり空ちゃんはすごいね。
僕は話に聞いただけだけど、いっぱい活躍してたみたい。
僕も、もう少しみんなの役に立てるようになれればいいんだけどな。
先の戦いで死んでしまった女の子は戻らないし、土蜘蛛との戦いもまだ終わらない。
でも、ひとまず。今回出発した全員が戻って来れたことを、喜ぼうと思う。
もう、悲しい顔の人は、増えてほしくないから。
――ごめん、ちょっと暗い話になっちゃったね。
ええと、今日はそれだけを言いに来たんじゃなくって……。
実は、驚くような嬉しいことがあったんだよ。
土蜘蛛の屋敷から帰ってきてすぐ、僕のクラスに転入生が来た。
それが、寅ちゃん――“渕埼 寅靖”なんだよね。
寅ちゃんは、僕が小学校に行っていた頃のクラスメイトだったんだ。
他の子に意地悪されかけた時とか、よく助けてくれたんだよ。
……といっても、寅ちゃんは絶対手を出そうとはしなかったけどね。
ほとんどは一睨みで逃げて行っちゃうから、その必要もほとんどなかったし。
そんな寅ちゃんが、“能力者”になってこの学校に来たってことに、僕は本当に驚いた。
嬉しくて「寅ちゃん」って呼んだら、「“寅ちゃん”はよせ」って怒られたけどね。
あは、言うことも昔と変わってないや。
これからまた同じクラスだと思うと、すごく嬉しいけどね。
――そうだ、空ちゃんに寅ちゃんを紹介しないと。
そのうち、暇ツブ結社に連れてってあげるのもいいかもなぁ。
何だか、わくわくするね。