先日、行って来た依頼の報告書が上がってきた。
サポートによる参加を除けば、俺にとってはこれが初めての依頼となる。
――結婚式直前に事故死した、花嫁のリビングデッド討伐。
最愛の花婿を喰らい、偽りの生を手にした花嫁。
彼女が滅びた時、その瞳は何を映していたのだろう。
命の熱を失い、冷え切った手。
白い手袋越しに触れたその感触が、今もなお忘れられない。
戦いの現場を不自然にならない程度に整え、ようやく一息ついた頃。
件の傷は、もう殆ど塞がりかけていた。
仲間には治癒の能力に長けた者も多かったし、そもそも、そこまで深い傷でもない。
非力な女性の腕では、全力で刃を振るったところで知れている。
せいぜい、痕が若干残る程度だろう。そう、俺は自ら診断を下した。
「――大丈夫、ですか?」
「ああ、問題ない」
気遣わしげな声に、短く言葉を返す。
まだ、任務は完全に終わったわけではない。
ここで、最後の仕上げを担うべき彼女に、余計な心配をかけたくはなかった。
ふと、衣装を調えられ、ソファに横たえられた花嫁の姿がよぎる。
同時に、彼女を護れなかった花婿の無念を、改めて想った。
どのような形であれ。
一度、死の境界を踏み越えてしまった者は、もう取り戻せない。
たとえ、自らの命を代償に差し出そうとも。
そうなってからでは、全てが遅い。
だから、俺は今あるものを護る。
この腕を剣として、この身体を楯にして。
それが、俺に出来る全て。
――今日、この夜を。護り抜けて、良かった。
《プレイング》
※メンバーの呼び方は姓を呼び捨て
心情:
花嫁は勿論、彼女を護れなかった花婿も無念だったろう
或いは、彼は自ら喰われる道を選んだのかもしれないとすら思う
そうであれば、あまりに悲しすぎるな
せめて、花嫁が手を汚さぬうちにあるべき場所に還そう
準備/方針:
20:00作戦開始、行動は迅速に
照明に懐中電灯持参
(戦闘時邪魔にならないよう、紐で下げる)
大学生の不慮の帰還に対しては王者の風で追い払う
戦闘(犬):前衛
直前に分身発動、一番手で庭に侵入し囮として犬を引き寄せる
行動可能な犬から一体ずつ狙い、数を減らす
龍尾脚→龍顎拳→分身(必要あれば)の連携を基本
戦線維持を優先、特に後列への攻撃は身を盾にして防ぐ
「俺に出来るのは、今を護ることだけだ」
花嫁:
犬が全滅したら屋敷に入り、勝手口等の有無に気を配りつつ捜索
発見次第、他のメンバーに知らせる
花嫁衣装は多くの女性にとっての夢だろう
だから、なるべく女性陣には手を下させたくはない
花嫁は、長く苦しませないよう布槍で一思いに貫く
せめて安らかに逝けるよう、出来る限りのことをしたい
「――ただいま」
「あの時、護れなくてすまない……あちらで、待っているから」
あとは、彼女が花婿と再会できることを祈ろう
事後:
花嫁の遺体を安置し、そのまま撤収
遺体の損傷が激しければ、翳に大学生のフォローを任せる
愛する者を喪い、残された者の哀しみは深い
しかし、生ある者にはいずれ、新しい幸せが訪れる筈だ
俺は、それを信じたい
最後に。この場を借りて、今回同行の仲間たちには深く感謝を。