――強くなりたい。
最近の僕が考えていたのは、ただそれだけで。
だから。一人でゴーストタウンに行こうと思ったんだ。
誰かのそばに居られる強さ。
誰かを支えられる強さ。
欲しいものが手に入るかどうかは、わからなかったけど。
他に、僕はいい方法を思いつけなかった。
身体じゅうが痛い。
今日と、昨日と、おとといと、もっと前と。
どれがいつの怪我で、どこがどう痛んでいるのか、もうさっぱりわからない。
この部屋のゴーストは、何とか倒すことができた。
少しだけ、ここで休んでも大丈夫かな。
大の字でごろんと横になったところに、空ちゃんの声が聴こえた。
「何……やってんの、あんた」
顔を向けて見上げた先に、空ちゃんの驚いた顔。
考えてみたら、ここっていつも一緒に来ていた場所だったっけ。
ゴーストタウンが日課みたいになっている空ちゃんに、今まで見つからなかった方が不思議だったのかもしれない。
心配かけちゃいけないと思って、とっさに笑おうとしたけど。
それは、あまり上手くいかなかった。
「余計な心配かけさせんな、馬鹿」
あっという間に、僕は空ちゃんに抱えられて。
そのまま引きずられるように、外に停めてあった、空ちゃんのバイクの後ろに乗せられた。
「掴まる元気くらい残ってるね?」
振り落とされても拾ってやらないから、と言って、エンジンをスタートさせる。
貸してもらったヘルメットの奥で、僕は小さく頷いた。
車体を震わせて、勢いよく走り出すバイク。
ふと見上げた空は、どこまでも綺麗に晴れていて。
その青さが、胸にしくりと痛かった。