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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2017/10/21 (Sat)

4月25日。
今までの俺にとってこの日は、ただ、年齢を一つ重ねる節目に過ぎず。
よって、今年も、何事もなく過ぎ去るものだと思っていた。

しかし――

紅乃たちと参加したバトルカーニバルの試合を終えた後、翳が俺に声をかけてきた。

「お誕生日おめでとうございます……。
 お祝いに、お茶の席を用意させていただきましたから、
 後で光庭にいらして下さいね……」

その約束を皮切りに、次々と舞い込む幸運。

誕生祝いにと、ゴーストタウンに誘ってくれた友人たち。
『鈴蘭亭』に置かれたバースディボードと、そこに綴られた言葉。
温かな想いとともに贈られた、心尽くしの品たち。

俺と同じく、顔に二本傷のある、大きな虎のぬいぐるみ。
両手を合わせて座る猫と、ガラス細工の桜の花が揺れるお守り。
さまざまな動物の形をとった、手作りのクッキー。

贈り手の人柄と、心遣いとが、そこには溢れていた。


彼らが向けてくれる笑顔に、礼を返しながら。
こみあげる嬉しさの影で、不安にさざめく胸の裡がある。

どこか、申し訳ないという思いがよぎるのは何故か。
『暇潰し』で、誕生月が同じ者たちとともに祝いの言葉をかけられ。
好きなことを要求して良いと言われて、とうとう、それを言い出すことが出来なかったのは何故か。

光庭で、翳の用意してくれた茶会の席につきながら。
周囲のやりとりを眺めつつ、俺はふと、そんな考えに沈む。

「あの、退屈でしたか……?」

おずおずと発せられた翳の声に引き戻され、俺はばつの悪い思いに駆られた。
祝いの席で、仮にも主賓が取る態度としては問題があっただろう。

慌てて首を横に振り、この場に対して不満があるわけではない、と告げる。
それでも、翳の表情は気遣わしげなまま、俺に向けられていた。

「……慣れていないだけなんだ。
 こうやって、誰かに誕生日を祝われたことがなかったから」

おそらく、俺は戸惑っているのだろう。
友人たちが、自分に向けてくれた好意に。その温かさに。
今までは、ほんの僅かな例外を除いて、決して手に入らなかったものだから。

「誰かにお祝いされるというのは、嬉しいものですよね……」

――ああ、嬉しい……相応のものを返せるか、不安になるほどに。

その呟きは、自然と口から漏れた。

果たして、それだけの好意を受ける価値が、俺にあるのだろうか。
さざめく胸の裡、不安の根源。
そこに、静かな翳の声が重なる。

「きっと皆さん、渕埼さんが喜んでいらっしゃることも解ってると思いますわ……
 ……ここにいて祝ってもらうことができるだけで、十分……」

――それだけで、十分お返ししてもらっているのです。

何処か、遠くを見るように紡がれた言葉。
受け取る者の居なくなった想いの、哀しさを知る者の瞳。

「――ありがとう」

受け取ることができる側に、立つ者として。
この時ばかりは、迷わずに笑おうと、そう思った。

「……こちらこそ、ありがとうございます」

柔らかく微笑む翳に、空になった紅茶のカップを差し出し。

「――お代わりを、戴いても?」
「ええ、どうぞ……」

紅茶の香りと、暖かな日差しが満ちる中。
寄せられた想いの一つ一つを、改めて噛み締める。
巡り合えた、かけがえのない者たちの顔を、次々に思い浮かべながら。

――今は、この日の幸福を。


【♪11文字の伝言/Sound Horizon】


【戦績】『気まぐれポメラニアン』予選1回戦目で敗退/バトルカーニバル:0勝

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