――四月中旬、鎌倉市内某所。
幼い面差しに笑みを浮かべる男の手には、温かな毛に包まれた生き物が握られていた。
オレンジと白の縞模様、青く丸い瞳、柔らかな肉球。
その全ては、今や男の意のままにある。
これは裏切りの証。目的のため、男は友情に背いた。
これは勝利の証。手の内にある限り、敵は動けぬ。
しかし、切り札としては、まだ足りない。
人質を容易に奪われてしまえば、たちまち形勢は逆転する。
多少の抵抗をものともしない、圧倒的な力が必要だ。
そして――運命の悪戯か、或いは悪魔の導きか。
男は、とうとう出会ってしまった。
探し求めた力、金色に輝く雄々しき一頭の虎に。
我々の知らないその場所で。
悪の芽は静かに、しかし巨きく育ちつつあったのだ――
(´▽`)
ねえねえ剛一くん、悪の総統やってくれない?
「……は? それは一体全体どういう事だ?」
ヒマツブの兜争奪戦でね、僕たちのいるヒマ組が押されちゃってるから。
寅ちゃんの猫を人質に取ったんだけどー。
僕と影郎くんだけじゃ、すぐ取り返されちゃいそうだし。
万が一、桜ちゃんに何かあったら大変だから、ここは強い人が味方に欲しいなーって。
「いや、押されてるのは分かるが寅靖の猫人質に取るたぁ……
中々大胆と言うか命知らずと言うか、凄い事するなお前。
まぁ、そういう事なら男天城、力貸させてもらうぜ」
〔ここで一拍の間〕
「――それに、その方が面白そうだしな!」
ヽ(´▽`)ノ
わーい、ありがとう剛一くん……いえ、総統さまー。
――この瞬間、我々(=ツブ組)にとって強大な敵が誕生した。
悪の総統・天城剛一、またの名を“金虎”。
※称号は結社イベント当時
(´▽`)
さすが総統さま、かっこいー
「はーはーはー、そうだろそうだろー」
――通信機器の調子が思わしくないのか、ここから音声は急激に抑揚を失っていく。
(´▽`)
これでわれわれのしょうりはうごきませんな 総統さま
「しかし てきはこわいやつらがおおいぞー
もっとぼうへきがひつようだー」
そうですな総統さま われらにもつかえるてごまがひつようです
「よーし、あいてをひきこむのをこころみるのだー
『にくきゅうをさわらせてあげる』
とかいえば すうにんねがえりそうなのだー」
それはよいかんがえですな
「それでは、さっそく実行にうつすのだー」
おまかせください総統さまー
「はっはっは、これでわが方の勝利は確定したものだー」
ははは、せいぎはわがぐんにありー
〔浮かれた笑い声の直後、通信記録終わり〕
『暇潰し』兜争奪戦結果:199点VS-358点で悪の総統軍団ヒマ組の逆転勝利
※この通信記録はほぼノンフィクション(=MSNメッセンジャーのログ)です。
ご協力戴いた天城剛一氏(とその背後殿)に深く感謝!