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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2017/10/17 (Tue)

7月の午後、大樹の木陰。
照りつける太陽も、ここでは木漏れ日となり、まばらに小さな光を落とす。
涼しげな風が、俺の傍らで眠る桜の髭をそっと撫でていた。

流れる音楽は、控えめながら澄んだ歌声。
そして、そこに重なる、二本のギターの音色。

学園祭は、もう明日に迫っている。

必死にリズムを取ってギターを爪弾く中、唐突に伴奏の旋律が乱れた。
一瞬の焦りが続く音を狂わせ、指はもつれて動かない。
俺のギターの音が途切れるとともに、曲は再び中断となった。

「どうして、そんな簡単なとこで何度もとちれるんだ?」
「……うるさい」

呆れるというより、むしろ感心したような口調で、白馬が言う。
苛立ちを必死に抑えつつ、俺は再びギターを構えた。

今日に至るまで、家ではひたすらに練習を積んできている。
この一曲に限れば、完璧とは言い難くても、ある程度形にはなったはずだった。
それが、合奏になった途端まるで上手くいかない。
俺一人が足並みを乱しているという事実は、悔しいという以上に心苦しかった。

「肩に力入ってるぞ」

苦笑混じりに、白馬が俺の肩を叩く。

「下手にノーミスでやろうと意気込むから、途中で止まるんだよ。
 お前の伴奏なんて誰も期待しちゃいねえんだから、気楽に行けって」

神経を逆撫でされる台詞ではあるが、正論には違いない。
主役は翳の歌なのだから、その邪魔にさえならなければ良いのだ。
そう考え、少し気が楽になる。

「一度、お茶にしましょうか」

俺たち二人の顔を眺め、翳が穏やかな微笑を浮かべた。


翳の淹れたアイスティーの冷たさが、火照った身体に沁み込むようで心地良い。
休憩の最中、俺はギターを取り、先の合奏で詰まった部分を復習う。
過剰に気負う必要はないと言っても、出来る限り不安要素は除いておきたかった。

「……お前より桜の方がよっぽど正確だぜ、リズムの取り方が」

白馬の声を聞き、ふと、桜に視線を落とす。
寝息を立てる桜の尻尾が、まるで、曲に調子を合わせるかのように揺れていた。

「主人思いの猫で良かったな、おい」

軽く噴き出した後、白馬が肩を震わせて笑う。
眉を顰めたところに、やんわりと翳が口を開いた。

「でも、上達は早いと思いますわ。しっかり練習されてますもの」

こちらを向き、にこやかに目を細める。
銀色の瞳が、その微笑みを映して淡い輝きを放った。

「音も穏やかで渕埼さんらしくて――私は、好きですよ」

真正面から紡がれた言葉に、思わずどきりとする。
固まっている俺を眺めて、翳もまた、視線を横へと逸らした。

「そ、そろそろ……続きを、はじめましょうか……」
「――そう、だな」

ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべる白馬に軽く肘を入れつつ、ギターを構え直す。

「今度は、とちっても止まるなよ?」
「……わかっている」

そして、再び合奏が始まった。

 

 


囁くような歌声。風にのって、流れてゆく音色。


それは、どこまでも優しく、温かな時間を包んで。

 

 


――やがて、儚く消えてゆく。

 

【♪遠い音楽〔Live version〕/ZABADAK】 ※アルバム『Decade』収録

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触わる夢◆age29 -Genial Moon-
学校祭当日、光庭ではお茶と簡単な音楽を用意することになっていた。 伴奏の当てのない私は、本格的になりすぎる事を嫌って独りで歌うことを断念し、フルートでのソロを考えていた。 そこに旋さんから渕埼さんと3人で組む話を持ちかけられ、唐突にセッションをすることになったのは数日前の事。 その日のうちにCDを借りて、曲をアレンジした。 渕埼さんがギターを爪弾く様子を、想像して。 彼はどんな音でこのメロディを奏でてくれるのだろうかと、ただそれだけを・・・。...
とらっくばっくたいとるURL 2007/07/19(Thu)17:32:16
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