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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2024/11/23 (Sat)

〔承前〕

「……すまない」

ようやくそう告げた時、俺の心は意外なほど落ち着いていた。
ここに来て、やっと覚悟が決まったということなのだろう。

翳が、胸に抱えていた想いを全て、俺に明かしてくれたのなら。
俺もまた、己の心に正直であらねばならない。
それを余すことなく伝えて、初めて、答えを出すことができる。

何かに安堵するように、小さく息を吐いて微笑する翳を見て。
俺は、静かに言葉を続けていった。

「俺はずっと、君と正面から向き合うことなく逃げてきた。
 一番大切なことから、目を逸らして……君を、随分と傷つけた」

翳は、黙ってただ首を横に振る。
その微笑みが、今は心に沁みるように痛い。

「怖かったんだ……。
 君に近付くほどに、“彼”の存在が立ちはだかる気がして。
 どう手を伸ばしても届きはしないと、心のどこかで諦めていた」

拒絶されるたび、翳の中に“彼”の影を見ていた。
翳を傷つけたくないと、もっともらしい嘘をつきながら。
彼女が何に対して傷ついているのか、確かめることを避けていた。

「……正直を言うと、今も怖い」

今や翳の一部となった“彼”の存在。
俺の中に、それを嫉妬する心がないとは言えない。
再び、俺は逃げ出すのではないだろうか。
そんなことを考える自分の弱さが、堪らなく怖い。――けれど。

見失いかけていた想いの在処。
この腕で掴みたかったものは何か。護りたかったものは何か。
改めて己が魂に問い、そして、翳を見る。
俺の答えは、ずっと。動くことなく、ここにあった。


「不安はある。迷いも、無いと言えば嘘になる。
 それでも……」

あの時、最後まで告げることができなかった言葉。
紡ぐ音の一つ一つに、万感の想いを込めて。
俺は、とうとう、その一言を口にする。


「――俺は、君が好きだ」


瞬間、翳の表情が揺らいだ。

「本当、に……?」 

微かに震える唇が、確かめるように問う。
躊躇うことなく、俺は大きく頷きを返した。

「君の歌を、隣で聴かせて欲しい。
 許されるのなら、これからはずっと……」


“彼”が死してなお、君の歌であり続けるなら。
俺は生きて、護り続けよう。――君と、君が歌う、その歌を。


「私で良ければ、この声が途切れるまで……」


潤んだ銀の瞳が、陽の光を映して揺らめくように輝く。
やがて、一筋の涙が彼女の頬を伝った。


〔続く〕

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