丸く浮かぶ大きな月と、周りで輝く小さな星たち。
天を頭上に眺めて、人々は野兎たちを友に思い思いの時を楽しむ。
月を愛で、兎たちと山で一晩を過ごす祭――
それを目当てに、俺とキアラは、この冷泉街へと足を運んでいた。
→リプレイ『月と兎と祭りの夜』(朝比奈ゆたかMS)
月は、そろそろ中天にかかろうとしていた。
野兎を相手にはしゃぎ疲れたのか、隣で月を見上げていたキアラは、いつの間にか力尽きて、俺によしかかり小さな寝息を立てている。
俺の膝の上に居た野兎たちも、何羽か眠りこけていた。
風邪をひかないように、そっと上着をかけてやる。
もぞもぞと、無意識に体を丸めて包まる様子は、どこか野兎たちに重なって見えた。
女の子であることを厭い、男として気を張って生きている娘。
だからこそ、こういう時くらいは、心から安らいでいて欲しい。
今だけは、キアラは自分を偽らずにいられるのだから。
「――おやすみ、いい夢を」
頭を撫で、そっと囁く。
キアラの屈託ない微笑みが、俺の心をさらに和ませた。