僕は、色々と迷ったんだけど“キャスター”として、前線に出ることになった。
チームのメンバーは最近入った篁くんの結社『Umleitung』(略してウムライ)の子たちで、“クラッシャー”の前衛として空ちゃんと篁くん、後衛に“メディック”の“翳 彩蟲”ちゃん。
僕は、ちょうどその間に挟まって、射撃攻撃と援護を担当。
寅ちゃんは今回、前線の少し後の守りを固めながら、もしもの場合に備える“ラストスタンド”のポジションについた。
小隊には円ちゃんや剛一くんもいるみたいだし、きっと安心だと思う。
本人に言ったら、「いいから自分の心配だけしていろ」とか言われるだろうけどね。
……で。
出発するまでに身体が空いたってんで、空ちゃんとちょっとだけゴーストタウンに行って来た。
空ちゃんは一人で行くから待っててって言ったけど、僕も、少しは体を動かしておきたかったんだよね。
このまま出発しても、落ち着けそうになかったから。
最近は、僕も暇を見て寅ちゃんとゴーストタウンに行くようにしていたから、少しは戦いにも慣れてきた。
空ちゃんにもちょっとだけ褒められて、ちょっと嬉しくなっちゃった。
でも、そんなに時間はないから、あまり奥までは行けなくて。
そのうち、空ちゃんは建物の屋上に向かって階段を上っていった。
空ちゃんの後について外に出た時。そこは、一面の鮮やかな夕焼けで。
僕は感動して、しばらくオレンジ色の空を眺めていた。
「明日も、いい天気かなあ」
つい、そんな一言を口にしたりして。
そのまま、僕たちは明日の戦いの話を始めた。
お互いの隊列や進む方向を確認しあった後、空ちゃんが言う。
「気をつけなよ……テルはこういうの慣れてないんだからさ」
そりゃあ、僕はまだまだ頼りないけれど。
明日、空ちゃんは僕よりも前で戦わなきゃいけないんだよ?
どんなに強い能力者でも、最悪の場合は死んじゃう危険だってあるんだから。
心配になって、僕もこう言った。
「空ちゃんも、無理しちゃいやだからね?」
でも、やっぱり。空ちゃんは、首を縦には振ってくれなかった。
むざむざ死ぬつもりはないけれど、怪我を怖がっていたら、護れるものも護れない。
まして、これは戦いだから。
「約束はできない。……努力はするけどね」
そう答える空ちゃんの気持ちも、少しだけわかった。
――だから、僕も約束してとは言わないよ。そのかわり、たった一つだけ。
「帰ってきたら、また僕と夕焼けを見てくれる?」
あまりに空が綺麗で、それをいつまでも眺めていたかったから。
この戦いが終わったら、二人でもう一度ここに戻ってこよう。
「……いいよ」
いつもより優しい笑顔で、空ちゃんが頷く。
「行こうか」
うん、一緒に行こう。
そして、一緒に帰ってこようね。
夕焼けの綺麗な、この街へ。
【♪TEARS/ZABADAK】