この日を、素直に暖かい気持ちで迎える事が出来るようになったのは、つい数年前のことだ。
世間で、生まれた日を祝う習慣があることは知っていた。
子供の頃、厳格を絵に描いたような祖父が、一年でこの日だけは、不器用ながらも精一杯の心を尽くしてくれたことも覚えている。
それでも、あの当時の俺にとって。
自らの誕生日とは、ただ年齢を重ねる節目にしか過ぎなかった。
少なくとも、2年前――18歳の誕生日までは。
2009年4月25日。
俺は本日、20歳の誕生日を迎えた。
届けられた贈り物たちを前に、思わず頬が緩むのを自覚しながら。
俺は、その一つ一つを、手に取って眺めていく。
落ち着いたダークブラウンのレザー生地に、麻紐のステッチが施されたフリーホールベルト。
黒のデニム生地に桜花が舞う、和洋が調和した吊り下げ式ベルトポーチ。
宝石の輝きが、そのまま瞳の輝きとなる虎のピンバッジ。
遥かな空の色を思わせる濃紺の、ラピスラズリが嵌った銀のバングル。
アクアマリンの瞳を持つ、重厚な造りの銀のバングル。
銀で作られた貝母の鉤状の葉が、しっかりと手を繋いだ腕輪。
どれもが、贈り主たちの言葉をそのまま伝えてくれるようで。
どちらかと言えばアクセサリーの類に縁の薄かった俺の装いに、新たな色を加えてくれる。
良い陽気となり、出かける機会の増えるこの時期にも、大いに活躍してくれるだろう。
続いて手に取ったのは、自室での生活を彩るものたち。
咆哮する虎が雄々しい姿で彫られた、青白磁の香炉。
南国の貝と珊瑚の天然石で飾られ、夕闇の柔らかな光と芳香を放つアロマランプ。
いつか眺めた朝焼けの海をそのままに、胸に刻んだ記憶を鮮やかに呼び起こす写真パネル。
それぞれ、形は違いながらも、贈り主たちの優しさが篭められていて。
これらに囲まれた暮らしは、より一層心豊かで、暖かなものになるだろうと、俺は信じて疑わない。
改めて、贈り物を代わる代わる触れ、眺めながら。
俺は、この一日をもう一度思い起こす。
お祝いに、と一斉に鳴らしてもらったクラッカーの音。
ゴーストタウンへの誘い。
友人が贈り物と一緒に届けた、『20』の数字蝋燭がやたらと自己主張するケーキ。
結社で、祝いの言葉とともに振舞われたケーキ。
告げられる『おめでとう』の一言のたびに。
祝福を湛えた笑顔を目にするたびに。
じわりと、甘い気持ちが胸を満たしていくのがわかる。
穏やかな冬の日、深々と降り積もる雪のように。
暖かな春の日、柔らかく風に舞う桜の花弁のように。
「――ありがとう」
感謝の言葉は、自然と口をついて出た。
この喜びを。何度も、何度でも、繰り返し伝えたい。
大切な想いをくれた、
誕生日を大切な日に変えてくれた、
大切な、大切な皆へ――
ありがとう。
【♪ORRIZONTE/上野洋子】 [YouTube]
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◆おまけ:4月25日
※黙示録のチーム名に誕生花の名を付けて頂いたので、色々調べてみました。
寅靖のイメージ的に合っているかどうかは……皆様の判断にお任せします(笑)
【誕生花】 フロックス(草夾竹桃、花魁草)
>花言葉
『協調』 『同意』 『合意』 『一致』 『温和』 『火焔』
『あなたの望みを受けます』
『あなたの気に入れば幸せです』
【誕生石】 グリーンガーネット
>石言葉
『影響力』 『忠実』 『真実』 『友愛』 『純愛』
【誕生色】 エルブ
>特徴 『仕事に手ごたえを感じる挑戦者』
>色言葉 『繊細』 『スポーツ』 『時間』