誘惑に負けて、とうとう『無限のファンタジア』を始めてしまいました。
今後は、あちらのキャラ記事もこのブログで書いていく予定です。
キャラの紹介がてら、まずは軽くSS風味なものでもどうぞ。
武器を手にするようになったのは、成り行きに過ぎない。
故郷を焼かれ、家族を失って。
俺に残されたのは、左腕を嘗めた火傷の痕と、人より巨きなこの身体だけだった。
自分が戦うことに向いているだなんて、思ったことはない。
どちらかといえば、向いていない方だとも、思う。
それでも、俺は生きるために武器を取り、そして今、冒険者になっている。
「ルーシャ、何ボーっとしてんだよ?」
隣で発せられた声が、ぼんやりと考えに沈んでいた俺の意識を引き戻す。
銀の髪、大きな灰色の瞳。少々白すぎる肌に、長く尖った耳。
――キアラ・ルブレヒト。
このエルフの子が、今の俺にとって唯一の家族だ。
二人で過ごす時だけ、キアラは俺を愛称で呼ぶ。
「――ああ、ごめん。考え事をしていたんだ」
「誰も見てないからってさ、
んなでっかい図体でボーっとしてたら鈍い奴だと思われるぜ。
お前、ただでさえ危なっかしいんだから」
口は悪いが、その声には俺の身を案じる優しさがある。
見た目は少年のように装っていても、中身は歳の離れた妹のようだ。
「こないだだって、ドラゴンズゲートでぶっ倒れたじゃん。
敵にあっさり闇討ちくらってさ」
「……それを言われると、弱いなあ」
少々ばつの悪い思いで頭を掻く俺を見て、キアラが好機とばかりまくしたてる。
「大体、ストライダーってのは反射神経良いんじゃなかったのかよ。
本当は、それ付け尻尾なんじゃねぇの?」
「……疑うなら、引っ張ってみてもいいけど」
「おーし、言ったな? 後悔すんなよ」
そう言って、キアラは跳ねるように座っていた椅子から立った。
素早く俺の後ろに回って、犬に似た尻尾をぐいぐい遠慮なく引っ張る。
「――お前ね、流石にちょっと痛いよ。
そんなに引っ張ったら、生えてるものだってもげるじゃないか」
「引っ張っていいって言ったのはルーシャだろ」
「いや、限度ってものが……」
根元から抜かれては堪らないので、尻尾を強く振って抵抗する。
キアラはしばらく懲りずに俺の尻尾にじゃれついていたが、やがて疲れたのか、息を切らせてその場に座りこんだ。
「はい、おしまい。気が済んだか?」
「うぐぅ……本物だった……」
悔しそうに唇を噛む様子に、思わず笑みが零れる。
「何、人のこと見て笑ってんだよっ!」
「……いや、これは失敬。ほら、立てるかい?」
笑いながら差し出した手を、憮然としたキアラの小さな手が払った。
「だから笑うなって!」
怒鳴った後、大きく頬を膨らませて、ぷぃと横を向いてしまう。
思わず噴き出しそうになりながら、俺はキアラの頭を撫でた。
「止めろよ、もう子供じゃねーんだから!」
唇を尖らせ発せられた声と、頭を撫でる掌から伝わる温もり。
――その存在を、護りたいと想う。
自分が戦うことに向いているだなんて、今も思わない。
それでも、大切なものがあるなら。
俺は、護るために武器を取る。
いつか――平和が訪れる、その日まで。