空ちゃんと喧嘩しちゃった。
――というより、僕が一方的に怒らせちゃったんだけど……。
ちょっと長くなるけど、聞いてくれる?
今日、僕は空ちゃんと一緒に寅ちゃんの家に遊びに行った。
寅ちゃんがお茶を用意してくれてる間、縁側で空ちゃんと話していて。
ふとしたことで、僕は空ちゃんを怒らせちゃったんだ。
僕は、空ちゃんの笑った顔が見たい。
空ちゃんのことが好きで、一緒にいたい。
僕の伝えたいことは、それだけ。
でも、空ちゃんはそんな僕を信じられないと言った。
言葉の裏で。笑顔の裏で。僕が何を考え、何を望んでいるのか。
何一つわからない。だから、そんな奴は信用できない。
これ以上、わたしのエリアに入ってこないで。
そう、空ちゃんは叫んでいた。
「今のわたしに、テルはいらない……」
空ちゃんが泣きながら出て行くのを、僕は黙って見ていることしかできなかった。
戻ってきた寅ちゃんが、空ちゃんを追って走っていく足音も、まるで他人事みたいに遠くに聞こえてたんだ。
それからしばらく、僕は寅ちゃんのおじいちゃんと話してた。
寅ちゃんのおじいちゃんは、子供の頃から僕を知っていて、すごく可愛がってくれる。
何でも知っていて、すごく優しいんだ。
落ち込む僕を見て、おじいちゃんは教えてくれた。
人と人の、心の距離のとり方はとても難しいものだって。
時には、待つことも必要なんだよって。
それを聞いて、僕は反省した。
自分の気持ちを伝えるのに精一杯で、空ちゃんの都合なんて考えていなかったんだ。
僕は、おじいちゃんに挨拶をして寅ちゃんの家を出た。
許してくれなくてもいい。たった一言だけでも、謝りたくて。
前に一度だけ空ちゃんを送った、空ちゃんが住むアパート。
その部屋の前で、僕は空ちゃんが帰るのを待った。
日が暮れる頃になって、ようやく空ちゃんは帰ってきて。
そして、僕は空ちゃんに謝ることができた。空ちゃんも、僕を許してくれた。
それだけでも嬉しかったけど、この後、もっと凄いことがあったんだよね。
でも、これはちょっと言えないかな……。
うん、この話は、またの機会にってことで。
おやすみなさい。