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(株)トミーウォーカーのPlay By Web『SilverRain』『無限のファンタジア』のキャラクター達の共用ブログ。
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2024/11/23 (Sat)

〔承前〕

覆面忍者ルチャ影(+1名)の魔の手が刻々と迫る中、女湯では。

「――ん? いま何か音しなかった?」

ユエの声に、モルモがもきゅ? と首を傾げる。
女性陣の視線が、一斉にユエに向けられ。そして、彼女らも気付いた。
周囲の空気が、ほんの僅かではあるが――先刻までと異なっていることに。

ここに集った女性陣を甘く見てはいけない。
美しく可憐な彼女らも百戦錬磨の能力者。さらに、全員が鋭敏感覚持ちである。
生半可な隠密の技では、この優秀な索敵レーダーの群れをすり抜けるなど至難の業であろう。

異状を察した女性陣の対応は早かった。
勾音と円は、バスタオルを身に巻きつつ周囲の様子を窺う。

「不埒な方でもいましたかね?」
「あっちには寅靖もいるし、大丈夫と思うんだけど……」

本人に代わり先に謝っておきます。
信頼を裏切ってごめんなさい、円さん。
一応、止めようとしたんですけどね。
色々あって、どうしようもありませんでした。はい。

二人が戦闘態勢を整えるのを見て、桜羅も真似してバスタオルを巻く。
少しぶかぶかだが、そこは優しいお姉さん達が、動いても大丈夫なように形を整えてくれました。

「ありがとうなんだよぅー」
「うんうん、可愛い女の子達はきっちり守ってみせるんだぜ!」

一方、バスタオルの代わりに木桶を手に取ったのは、はたる。
周囲を見渡し、不埒者が来るならどこを乗り越えてくるか、というあたりを分析。
当たりをつけた柵の方へと歩み寄ると、彼女は猫変身を発動。
白地に焦げ茶の虎縞、小さな白虎を思わせる猫が、手近な石に立てかけた木桶の影に身を隠す。

「さて、来ますかね?」

いつもと変わらない口調で呟く勾音だが、彼女の意識は鋭く周囲へと向けられていた。
自然体の立ち姿に、隙は微塵も感じられない。

「モルモ、ちょっとあっちの様子見てきて。男の人だったら、パチパチしていいよ」
「きゅぴっ!」

ユエに偵察を頼まれ、モルモが張り切ってお返事。
しかし、ちょっと待ってほしい。
モルモはモーラットヒーロー。その実力はモーラット系の使役ゴーストの中でも最高位であり、『パチパチ火花』の威力も比べ物にならない。
――そう、『モラスパーク』と固有の技名がついてしまうほどに。

それ、起動してない人だと、能力者でも死にかねないんですが……?
 

困難とわかっていても、やらねばならぬ時がある。
己が意志を貫くため、戦わねばならぬ時がある。

それこそが、彼の正義。
それこそが、彼の信念。

庭木の枝上に身を隠し、乗り越えるべき柵を眼前に捉える男。
そう。彼の名は――!

「覆面忍者ルチャ影参上! いざ女湯(パラダイス)へダーイ……」

瞬間、奔る閃光。モラスパーク!

「……ブほぁ!?」

弱点属性の必殺技をモロに喰らい、情けない声を上げて湯の中にダイブするルチャ影。
「きゅぴ!」とポーズを決めるのは、僕らの白き毛玉モーラットヒーロー。
心なしか、額のⅤ字がいつもより眩しい。

あ、ここで訂正。
未起動の人間にモラスパークしたら死んじゃうよ、って言ったけども。
ルチャ影さん、バリバリに起動してたから問題ないよね。
むしろ、そうじゃなきゃ止められなかったよね。うん、お見事でした。

さて、うつ伏せの形で湯に叩きつけられたルチャ影。
浮かんできた彼の後頭部目掛けて、猫変身を解除したはたるが木桶で一撃。

綺麗に追い討ちが決まった形だが、問題が一つあるとしたら――。
猫変身で隠れていたおかげで、彼女だけバスタオルも何も巻いていないということ。
それに気付いたユエが、慌てて叫ぶ。

「……は、はたる姉ちゃんっ!?」

そして、その叫びで慌てた人間がもう一人。
ルチャ影を追い、ようやく現場に辿り着いた寅靖である。
彼が聞いたのは派手な水音、そしてユエの悲鳴。

もはや一刻の猶予もない。
そう判断した彼は、手近な柵をよじ上り――

「――そこかぁ!」

頭のてっぺんが柵の上に出たところに、円の石鹸手裏剣がヒット。
一瞬遅れて、勾音の投げた木桶が柵を掴んだ指にぶち当たる。
堪らず手を離してしまい、柵の上から真っ逆さまに落ちる寅靖。

そりゃ、何も言わずに柵を越えようとすれば、覗き魔と同じなわけで……。
咄嗟の判断を誤った報いは、しっかり喰らったのでありました。

額の汗を爽やかに拭い、勾音とハイタッチを交わす円。
全力で石鹸やら木桶やらを投げたというのに、体に巻いたバスタオルには乱れ一つない。流石だぜ世界結界。

ユエやはたる達を見れば、あちらも片がついたようである。
頭に木桶を被せられたルチャ影が、うつ伏せのまま湯船に浮かび――ん、ルチャ影?

「あれ、あっちがルチャ太郎? じゃあ、こっちは……」

とてとてと柵に歩み寄った桜羅が、柵の前にある大きな石などを足場に、ひょいと柵の上に頭を出す。

「寅ちゃ、大丈夫ー?」
「……生きてる。うん、なんとか……」

ここに来て己の判断ミスをようやく悟った寅靖が、手で己の額から目元を覆いつつ答える。
ちなみに、女性陣の反応があまりに速過ぎたがために、彼もルチャ影も何も見ることは出来ませんでした。と、明記しておく。


【冒険結果:失敗…】(覗き魔側)
【冒険結果:成敗!】(迎撃側)


「はいはい失礼しますよー。戦闘不能者回収したらすぐ帰りますんで」

数分の後。単身で女湯にやって来たのは彩晴。
本人も言っている通り、目的は女湯内の戦闘不能者(影郎)の回収である。
事前に女性陣にきちんと許可を貰って来るあたり、流石というか何と言うか。
あ、もう一人は自分の足で男湯に戻りました。念のため。

ピクリとも動かない影郎をよいせと担ぎ上げる彩晴に、今はバスタオルをきっちり巻いたはたるが声をかけた。
「――いちは?」
「湯当たりして伸びとる。無茶しよってからに」
「そう」

母の胎内に居た頃からずっと一緒だった弟の性格は知悉している。
まあ、おそらくは止めるべく奮闘はしたのだろう。
実行犯の阻止には至らなかったとしても。

「ほんじゃま、失礼しましたー」
「お疲れ様なんだよぅー」

軽く頭を下げる彩晴に、手を振る桜羅。
覗き魔は去り、女湯には再び平和が訪れた。


風呂上り、浴衣に着替えた男性陣が廊下を歩く。
「酷い目に遭ったな……」
心底げんなりした様子の寅靖に対し、影郎は懲りていないのか涼しい顔で口を開いた。
「折角の温泉なのに、湯冷めしそうですねぇ」
「……誰の所為だと思っている」
思わず拳を握り締めた飼い主を見上げて、傘太がびくりと目を丸くした。

「なー、夕食まで横になった方がええんとちゃう?」
「水分取って少し落ち着いたし、大丈夫だろ……多分」

言葉とは裏腹に、いちるの表情にはまったくもって元気がない。
湯当たりより、むしろ姉の説教を覚悟して気が重くなっているのかもしれないが……そんな従兄の様子を見て、彩晴は小さく溜め息をついた。

「――寅靖サン、ちょっと」

そう言って、最後尾を歩いていた寅靖を手招きしたのは勾音。
一見すると口調や表情はいつも通りのクールな微笑……に見えるものの。
笑ってない、ぜんぜん目が笑ってないよ勾音さん!

「少しだけ、お時間いただけますかね?」

にっこり。

この時点で、既に嫌な予感を通り越して冷汗が流れ出すレベルだが、まさか断れるはずもない。
顔見知りに遠慮はしても友人に遠慮はしない――そんな彼女に連行された寅靖は、またトラウマの種が一つ増えたとか増えなかったとか。合掌。


一部のお仕置きタイムをよそに、こちらは風呂上りの女性陣。
覗き魔を撃退したご褒美に、円がドライヤーでモルモをもっふもふにブロー。
桜をちょこんと膝に乗せた桜羅が、モルモの柔らかな毛並みに手を伸ばして撫でる。

「もふもふのふかふか、なんだよぅー♪」

はしゃぐ桜羅に、モルモはきりりと額のⅤ字を輝かせて。
ユエは自分の髪を乾かしながら、そんな様子を楽しそうに眺めていた。

「良かったねー、モルモ♪」
「もきゅ♪」

やはり、本日一番の勝ち組はモルモさんでしたとさ。
一件落着、めでたしめでたし。

〔続く〕
 

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